従業員の転勤に伴う社宅への引っ越しは、手続きが多岐にわたります。こちらの記事では、人事・総務担当者向けに、引っ越しに伴い必要となる手続きについて解説。スムーズに入居準備を進めるためのポイントを解説していますので、ぜひ参考にしてください。
社宅への引越しで必要な役所の手続き
転出届・転入届・転居届
従業員がこれまで住んでいたところと別の市区町村に引っ越す場合には、まず旧居のある役所で「転出届」を提出し、発行された転出証明書を持参して新居のある地域の役所で「転入届」を提出します。転出届は転出日の前後14日以内に提出することが法律で義務付けられています。もし同一市区町村内での引越しであれば、転出届や転入届の代わりに「転居届」を引越し後14日以内に提出します。
これらの手続きがもし遅れた場合には、過料が科される可能性がある点に加えて、新たな住所での行政サービスが受けられないため、人事・総務担当者は従業員に対し期限内に手続きを行うようにアナウンスすることが大切です。また、マイナンバーカードを用いた「特例転出」を利用すれば、転出証明書を受け取ることなく転出・転入の手続きを行えます。
マイナンバーカードや印鑑登録の住所変更
住民票の異動手続きとともに、マイナンバーカードの住所変更(券面事項入力補助)も必要です。転入・転出手続きを行う際に、役所にカードを持参して新住所を追記してもらうとともに、ICチップ内の情報更新も行います。
他の市町村に引っ越すケースについては、引越しから14日以内、転出予定日から30日以内に役場に行き転入届を提出しなかった場合、または転入届を提出してから90日以内に継続利用の手続きをしなかった場合には、マイナンバーカードが失効してしまい再発行の手続きが必要となります。
また、印鑑証明は異なる市区町村に転出すると自動的に抹消されるため、旧住所での廃止手続きを行う必要はありません。新たな住所地で印鑑証明が必要な場合には、転出届を提出する際に新たに印鑑登録の手続きを行います。
子どもの転校・児童手当などの手続き
家族とともに引越しをする場合には、子どもの転校手続きも非常に重要です。
公立の小中学校であれば、まず在籍している学校から「在学証明書」と「教科書給与証明書」を受け取り、新たな住所の役所にて転入届を提出した際に発行される「転入学通知書」とともに新たな学校に提出するのが一般的な流れです。
高校や私立学校のケースでは、編入試験の有無など学校ごとに要件が異なることから、早いタイミングで直接学校に確認するように指導します。
また中学生以下の子どもがいる家庭で受給している児童手当については、異なる市区町村に引っ越す場合には、旧住所にて「受給事由消滅届」と、新住所での「児童手当認定請求書」の提出を行う必要があります。引越しから15日以内に申請を行わないと支給されない月が発生してしまう恐れがありますので、期限を厳守するように伝えることが欠かせません。
その他、家族構成や状況によって必要な手続き
上記の基本的な手続きのほか、従業員の個別の家族構成やライフスタイルに応じて役所での追加手続きが発生します。たとえば保育園や幼稚園に通っている子どもがいるなら、転園するには自治体ごとの空き状況を確認し、入園申し込み手続きを行う必要があります。また、高齢の家族と同居している場合には、「介護保険被保険者証」の返納や新たな住所での要介護認定の引き継ぎ手続きが必要となります。
さらに、犬などのペットを飼育している場合には狂犬病予防法に基づいて、旧居での登録事項変更や新居の住所を管轄している保健所に届け出を行うことが義務付けられています(引越し後30日以内)。
人事担当者は、従業員ごとに異なる事情を考慮した上で、手続き漏れを防ぐためのサポートを行います。
社宅への引越しで役所以外に必要な手続き
電気・ガス・水道・インターネットの手続き
新居に引越し後、すぐに生活をスタートできるように電気やガス、水道、インターネットといったインフラ関連の停止・開始手続きを行います。手続きは引越しの1〜2週間前に行いますが、インターネット経由で手続きを行えるケースも多くなっています。
ただし、電気や水道はオンラインや電話で手続きが完結するケースも多いものの、ガスに関しては本人または代理人の立ち会いが必要になるため、ガス会社と日程調整を行うことが必要になってきます。社宅の契約形態によっては会社が一括で手続きを行うケースもあることから、手続きは従業員が行うのか、会社が行うのかをあらかじめ明確にしておくことが大切です。
インターネット回線の工事は、状況によっては数週間の待ち時間が発生する場合もありますので、早めの手配を促すことが重要です。
郵便物の転送届や各種住所変更
旧居宛の郵便物を新居に届ける必要があるため、郵便局に転送届を提出するようにアナウンスします。窓口で提出できるほか、「e転居」を利用することでインターネット経由での手続きが可能です。提出を行った場合には1年間無料で転送が行われます。
そのほか、運転免許証の住所変更、銀行口座やクレジットカード、各種保険、スマートフォンや通販サイトの登録住所を変更するといったように、さまざまな住所変更を行うことになります。
旧居の解約・退去手続き
持ち家以外の賃貸物件から社宅に引っ越すケースでは、従業員自身で旧居の解約手続きが必要となります。一般的に、退去を希望する日の1〜2ヶ月前までに管理会社や貸主へ解約についての通知を行うこと義務付けられています。通知が遅れてしまうと、新居の家賃や自己負担金と、旧居の家賃を二重に支払うことになる可能性もあるため注意しなければならないポイントです。
また、退去時には立ち会いや原状回復費用の精算などが生じるため、スケジュールに余裕を持った引越し計画を立てるように従業員に指導を行っていきます。
社宅への引越しで会社に必要な申請・確認事項
社宅への入居申請と必要書類の提出
社宅を利用する場合、まず社内規程に基づく「入居申請書」の提出が必要です。会社は通勤距離や家族構成など、社宅への入居条件を満たしているのか審査を行います。借り上げ住宅の場合、賃貸借契約を結ぶために従業員の住民票や身分証明書のコピー、場合によっては連帯保証人の同意書などが必要になることがあります。
人事・総務の担当者は、どの書類がいつまでに必要かという点を一覧にして従業員に明示し、契約手続きや審査が滞ってしまわないように進めていくことが大切です。
引越し日・入居日・鍵の受け取り方法の確認
賃貸借契約を締結すると、正式な入居可能日(=家賃発生日)が確定するため、従業員の希望も考慮しながら引越し日の調整を行い、管理会社と連携しながら鍵の受け渡しスケジュールの取り決めを行います。この時、鍵は会社経由で渡すのか、現地の不動産会社に従業員が足を運んで直接受け取るのかを決めておく必要があります。
また、引越し業者の手配は会社指定の提携業者で行うのか、従業員自身が手配を行うのかも確認しておくことが必要です。
引越し費用の会社負担範囲と精算方法の確認
転勤に伴う引越し費用は、どこまで会社が負担し、どこから従業員の自己負担になるのか、社内規程にて明確に取り決めを行い、従業員に対してもあらかじめ説明を行っておくことが必要です。一般的な引越しの運搬費や敷金・礼金は会社負担となるケースが多いといえますが、エアコンの着脱やピアノ運搬、不用品処分などオプション作業や退去時の原状回復費用は自己負担としている企業も少なくないようです。
また、費用の支払いは会社から直接請求なのか、従業員によって立て替え精算を行うのかも案内しておき、領収書の提出期限も明示しておいてください。
社宅への引越しでは住民票を移す必要がある?
社宅への引越しでも原則として住所変更の届出が必要
社宅への入居だとしても、生活の拠点が新たな住所に移りますので、住民票の住所変更を行うことが原則です。正当な理由なく手続きを行なわなかった場合、過料が科されるおそれがあります。また、住民票を移さないままにしておくと、新住所での選挙権が行使できない、公的な郵便物が受け取れないなど、従業員自身の生活に影響をおよぼすため、会社からも手続きを促すことが大切です。
単身赴任など一時的な居住の場合の注意点
単身赴任などで赴任期間が1年未満と決まっていたり、週末は定期的に家族がいる本来の自宅に帰っているようなケースでは、生活の拠点が異動していないとみなされるため、例外的に住民票を移さなくても良いケースもあります。
ただ、社内規程において通勤手当の算出や住居手当の要件として、新住所の住民票提出を義務付けている企業もあるため注意が必要です。単身赴任者に対しては、自社の労務管理上のルールと照らし合わせながら、住民票の扱いについて個別に指示を出すことが求められます。
アウトソーシングで大幅削減
社宅の消費税対応や仕訳処理は、「非課税」「不課税」「課税仕入」などの区分判断が必要となり、担当者にとって大きな負担になりがちです。
さらに、契約更新・解約精算・家賃送金・支払調書作成・原状回復費の確認など、社宅管理には専門性の高い業務が数多く存在します。
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社宅の引越し手続きを円滑に進めるポイント
会社と従業員の対応範囲を明確にする
引越しに伴う手続きは多岐に渡ります。そのため、「誰が」「何を」「いつまでに」行うのか、といった役割分担を明確にすることが、スムーズな進行につながります。物件探しや引越し業者の手配、インフラの手続き、旧居解約などにおいて、会社側が代行・手配する範囲と、従業員自身で手配すべき範囲が曖昧なままだと、手続き漏れや重複が発生しやすくなります。引越しに関する資料を作成して配布してそれぞれの責任範囲を明らかにしておくことで、担当者への不要な問い合わせを減らせます。
手続きチェックリストを共有・管理する
引越し準備から入居後までのタスクを時系列で記載した、「手続きチェックリスト」を作成し、従業員と人事・総務担当者間で共有・管理することがおすすめです。カテゴリ別に整理して進捗をチェックできるようにしておくと、抜け漏れを防げます。例えばクラウドツールなどを活用することで、状況をリアルタイムで確認できるようになるため、担当者は適切なタイミングでリマインドを行えるようになります。
社宅管理代行サービスを活用する
社宅に関連する引越し手続きは、物件の契約や費用の精算、入退去の進捗管理など非常に煩雑であり、特に転勤シーズンは人事・総務部門の工数を大きく圧迫することになります。このような場合、業務負担を軽減するには社宅管理代行サービスを活用するのもひとつの選択肢です。
専門的なノウハウを持つ代行会社に、物件手配や契約管理などをアウトソーシングすることで、担当者は他の業務に集中できます。従業員も窓口が一本化されるため、引越しにまつわる問い合わせや手続きの負担が軽減されるといった面があります。
