単身赴任で社宅が二重になってしまう場合、税務上の扱いや制度の公平性について気になる方も多いでしょう。
どのような場面で二重貸与が起こるのか、実務でよく選ばれている対応策にはどんなものがあるのか、社宅規程で確認しておきたいポイントや社内への説明のコツなど、総務人事担当者が判断する際に役立つ情報をまとめました。
社宅の二重社宅(二重貸与)とは?
二重社宅が起きるケース
二重社宅とは、単身赴任者が赴任先で社宅(借上げ社宅や寮など)を利用する一方で、家族が元の社宅に住み続けている状態を指します。
たとえば、子どもの転校を避けたい、配偶者が仕事を続けたい、妊娠や出産の時期と重なって転居が難しいなど、家族全員で引っ越すことが現実的でない事情がある場合に発生しやすいです。赴任先が単身者向けの住居しか用意できない地域であったり、会社のルールで家族帯同が認められていなかったりすることも、家族を残す理由となるでしょう。
また、業務の引継ぎや入退去の手続きのタイミングによって、旧社宅と新社宅の契約期間が一時的に重なってしまうケースもあります。
二重貸与が問題になる理由
二重貸与が問題視されやすい理由は、大きく2つあります。
- 1つ目は税務上の取り扱いです。
社宅として認められるためには、従業員から賃貸料相当額の50%以上を徴収するなど、一定の要件を満たす必要があります。この要件から外れてしまうと、給与課税の対象となる可能性があります。
なお、住宅手当を現金で支給する形や本人が直接契約した家賃を会社が負担する形は、社宅貸与とは認められません。 - 2つ目は福利厚生の公平性です。
対象となる条件や会社負担の範囲が曖昧だと、「特定の社員だけが優遇されている」と受け止められやすくなります。
たとえば、「配偶者が正社員の場合は二重社宅を認めるが、パートの場合は認めない」といった細かな線引きをすると、不満の原因になりがちです。
実務上よく採用される方法
①赴任先を社宅、元の自宅には住宅手当なし
赴任先については会社名義で借上げ社宅を手配し、本人から賃貸料相当額の50%以上を徴収する一方で、元の自宅側には住宅手当を支給しない運用です。
家族が残る住居にまで会社が補助を出すと、二重に支援することになってしまいます。また、現金で住宅手当を支給する場合、国税庁では原則として給与所得として扱われるため、課税の対象となります。会社負担を赴任先の社宅だけに限定すれば、税務上の扱いも明確になり、社内への説明も行いやすくなります。
②元の社宅は家族社宅として継続、赴任先は単身赴任用社宅
家族は元の社宅に住み続け、赴任者は赴任先の単身赴任用社宅に入居するパターンです。これは二重貸与に該当するため、まず社宅規程に二重社宅の扱い、単身赴任の定義、費用負担、承認フローなどが明記されているかを確認することが不可欠です。
規程に明記することで、少なくとも「どのような場合に二重社宅を認めるのか」という基準が明確になり、社内での不公平感を軽減できます。子どもの就学状況や配偶者の就労など、家族帯同が難しい具体的な要件を盛り込んでおくと、承認の判断がブレにくくなります。
ただし、規程を整備するだけでなく、税務上の要件(契約名義や賃料徴収など)もきちんと満たしているか、実務面での確認も必要です。
③赴任先を社宅とし、元の社宅は返還して住宅補助手当を支給
赴任者は赴任先の社宅へ入居し、元の社宅は返還して家族側は民間の賃貸物件などへ切り替えます。会社が2つの社宅契約を抱えずに済むため、更新管理や退去時の精算といった負担を抑えやすい方法です。
なお、家族側への住宅補助は課税対象となるため、給与計算でどう処理するかを明確にしておく必要があります。「非課税にできないか」と悩むよりも、最初から「課税されるもの」として制度を設計しておいた方が、実務担当者が迷わずに済みます。
会社が対応すべきチェックポイント
社宅規程に明記されているか?
二重社宅を認めるのであれば、社宅規程に条件と手続きを明確に記載しておくことが前提となります。具体的には、二重貸与の可否、単身赴任の定義、対象期間、会社負担の範囲(家賃・共益費・光熱費・初期費用・更新料など)、本人負担の計算方法、承認フロー、帰任時の退去・精算方法などです。
家族状況が変わった際の変更届や証憑書類の扱いについてもルールを決めておくと、運用がブレにくくなります。また、特例を認める基準も併記しておけば、担当者が交代した際の混乱を防ぐことができます。
税務上のリスクはないか?
二重社宅では、会社が負担する住居費が税務上の「社宅」として扱えるかどうかを確認する必要があります。契約名義、本人からの家賃徴収、実際の入居実態などが整っていなければ、給与課税と判断される可能性があるのでご注意ください。
現金の住宅補助は課税扱いになりやすいため、支給根拠と給与計算での処理方法を統一しておきましょう。また、赴任が終了した際の精算や立替払いの扱いについても、税務処理を含めて整理しておくと混乱を減らせます。事前に税理士などへ確認しておくことが有効です。
労務上の公平性
二重社宅には個別の事情が絡むケースが多いため、例外対応が増えると不公平感が生まれやすくなります。適用条件を誰でも確認できる形で明示し、役職や部署によって運用が変わらないよう統一するようにしましょう。
支給期間や上限額、本人負担のルールを明確にし、承認は複数名で行うようにすると、特定の社員だけが優遇されていると見られにくくなります。対象外となる基準も示して判断理由を記録に残せば、説明のブレも防げるでしょう。
まとめ
単身赴任における二重社宅は、規程の整備、税務上の整理、公平性の担保がすべて揃っていないと、トラブルにつながりやすいテーマです。判断に迷う場合は、社宅代行会社へ相談し、制度設計や運用フローを点検してもらうようにしましょう。
