自社で社宅を所有した結果、総務担当者などに社宅管理業務の負担が偏る例は少なくありません。このページでは社有社宅の廃止や縮小に伴うメリットとリスク、また適正な社宅廃止プロジェクトの注意点や流れをまとめています。
企業が社宅を廃止する主な理由
社有社宅の老朽化や修繕負担により固定資産負担が重い
企業が自社で所有している社宅や従業員用の物件を手放したいと考える理由として、まず管理業務の負担やコストの増大が挙げられます。
そもそも社宅管理は対象となる物件についてトータルの管理業務が必要となり、例えば老朽化する施設の修繕や生活に関連した各種設備の修理、またそれらに関する費用や毎年の固定資産税といったランニングコストの処理など、多方面のケアが欠かせません。
加えて、それらの業務負担が社宅管理を担当する部署や担当者に偏るといった点も問題です。
社員ニーズとの乖離で入居率が低下
社宅を管理する側にとってのデメリットや負担だけでなく、実際に社宅へ入居する従業員の視点でも様々な課題やデメリットが考えられます。
具体的には、社宅が古くなったり、時代の変化に対して住環境が不十分であったりすると、そもそも社宅を利用したいと考える従業員が減ってしまいます。
そうなった場合、コストや負担をかけて社宅を所有・管理していくメリットが失われ、むしろ余分な固定資産を保有するデメリットばかりが拡大するでしょう。
社宅廃止で起こりがちなトラブル
金銭的な不利益に関するトラブル
社有社宅を廃止することで考えられるトラブルとして、まず注意すべきは従業員の手取りや実質賃金に関する問題です。
一般的に、社有社宅の入居費や賃料は社外の賃貸マンションの家賃などと比較して少ないため、従業員が社宅廃止によって他の賃貸物件へ引っ越す場合、月々の家賃負担が増大して実質的な可処分所得の減少につながり、従業員から会社への不満が高まる恐れも生じます。
退去・住み替えに関するトラブル
会社として社宅を廃止しようとしても、従業員の中に退去を拒否する人物がいた場合、社宅廃止の手続きがスムーズに進まないばかりか、場合によっては法的トラブルにまで発展しかねません。
また、社宅廃止や引っ越しに同意している従業員でも、次の住居や物件を見つけるまで時間がかかったり、引っ越しの準備に猶予を求めたりといった要望を出してくる可能性があります。
加えて原状回復にかかる費用を誰が負担すべきかという点で、労使間で遺恨となる恐れもあるでしょう。
お金・税務・処理のトラブル
従業員に社宅廃止を納得してもらおうと、新居の家賃負担をケアするための住宅手当を設定したり、引っ越しや転居にかかる費用の一部を会社が負担したりといった対策もあります。
しかし、それは実質的に賃金アップと同じであり、人件費の増大や社会保険料の増加といった長期的なコスト負担を念頭に置かなければなりません。
また、労務管理の業務内容も増えるため、担当者へ別の負担が発生する恐れもあります。その他、物件の売却益によって法人税の負担や処理が増加する可能性も考えられます。
社宅廃止プロジェクトの進め方
①現状の棚卸し
社宅廃止を社内プロジェクトとして進めたい場合、まずは自社で所有している社宅の物件数や状況について正しく把握することが欠かせません。また、その売却や解体などに関連して不動産業者に相談するだけでなく、中長期の視点で費用シミュレーションを行うことも重要です。
②新制度の設計
社有社宅へ入居している従業員に対して、会社として住居の確保や安定した生活をサポートするための新たな制度を設計することも必要です。新制度が十分に機能しない場合、それまでの社宅利用者がそのまま退職者になってしまう可能性もあります。
③法的チェック
社宅として活用している物件の処分や新制度への移行・実施などに関して、法的にリスクやトラブルがないかプロにチェックしてもらうことも大切です。
特に、雇用契約や労使間の取り決めに従業員の生活支援や住居支援に関する記載がある場合、社宅廃止以前と同等かそれ以上の支援制度を用意しなければ後々に訴訟へ発展する恐れがあります。
④従業員への周知
いざ社有社宅の廃止を決定したとして、当然ながら廃止前に全ての従業員へ周知徹底を行います。なお、この際に会社からの一方的な決定や不当な押しつけとして不満を抱かれないよう伝える人物や伝え方にも配慮しなければなりません。
⑤退去・売却・解体と規定の書き換え
社宅を利用している従業員のコンセンサスを得られた後、各従業員の退去や転居、社宅物件の売却や処分といった手続きへ進むと同時に、就業規則や会社の規定の書き換えといった処理も行う必要があります。
借り上げ社宅へ切り替えるという方法も
社宅は家賃負担などを抑えたい従業員にとって有用であり、企業にとっても就労環境や待遇をアピールする上でメリットがあります。しかし社有社宅の維持や管理にかかるコストや業務負担は大きく、むしろデメリットやリスクが上回ることもあるでしょう。
そのような場合、自社物件でなく借り上げ社宅へ切り替えたり、社宅代行会社へ依頼したりといった解決方法もあるため、まずはプロへ相談することが大切です。
